ドライクリーニングによる色止め・ソーピング
移染や色落ちで問題になる多くの物は、染色工程の中で十分な精練が出来ていない事が原因です。
最近では、中国現地で染色された物や韓国の市場等で調達された生地で製品を作ったりする事が多く、色落ちの問題が続発しています。
石油系ドライ溶剤はもともと水の様に無色透明で、ほとんどの繊維はこの石油系溶剤で 洗う事が出来ます。
ドライソーピングとは、この溶剤で繊維上の余分な染料を洗い流してしまう方法です。このきれいなドライ溶剤に色落ちする黒いスカートを入れてみました。すると・・・
スイッチを入れて3分後に透明な溶剤がこんな色になりました。これは、余分な染料が石油の油性の力で染着力を弱められて溶け出した事によるものです。
クリーニング屋さんなら、この時点でビックリして商品を取り出してしまうんです。
なぜなら、お客様の商品が色が変わってしまうかもしれないのと、一緒に洗っている他の服に移染してしまうからです。
クリーニング業界では、こう言った事で弁償へとつながる事もあります。
しかし、私たちは色を出し切る事が目的です。ほとんどの場合、クロならクロ一色を十数枚ドライ機に入れてソーピングするのでクリーニング屋さんの様な心配をする必要がありません。もっともっと、色が出てくれなくては色止めにならないのです。
そして、さらにそれから10分のソーピングを進めていきます。
洗いはじめは薄い青の染料が出ていました。色味の中で青は一番色抜けし易い色でシミ抜きでも青い色から抜けてくる事がよくあります。
今回のソーピングでも青系統から溶け出し、時間がたつごとに赤い色が抜けてそれが混ざり合い濃い紫色へと変化しているのがわかります。
赤がたくさん溶けだすと、赤ワインの色になる事もあります。こちらの写真位に色が溶けだすと、もう擦っても色移りする事はほとんどありません。
私たちは、生地検査機関が堅牢度の検査をする時と同じ添付白布を使って色の移り方を見ているんですよ。
では、ドライソーピングテストでダメな時は・・・
その場合は、水洗機を使うしかありません。
生地によって、あるいは染色方法によってそれぞれ適切な薬剤を使ったり、薬剤の効果を最大限に引き出す水温にしたりして、テストして行きます。
たとえば、綿なら反応染料が使われている事が予測されます。発色の仕方によっては、建て染めや硫化染料反応染料も考慮に入れます。
シルクなら、酸性染料と反応染料を使って出したい色を作っている事も考えられます。
混紡の生地なら染料が効きにくい方の素材から色が出ている場合もあります。 ポリエステルなら、たいていの場合は分散染料が使われています。
ナイロンは酸性染料。アクリルはカチオン染料。
こうして、それぞれの素材に使われる染料によってそれを制する薬剤を選んでいく事になります。
こうした工程を経た製品は、水洗機を使って高温にしたりする事が多いので色が止まっても(フィックスしても)その後のプレスに大変手間がかかってしまいます。
ですから、お客様は、「そこまでお金をかけて販売できるようになってもコストが合わない」と言う事になってしまうのです。
耐光堅牢度とか、塩素堅牢度が低いとか・・・
堅牢度試験に通らなければ販売できませんよね!
私たちも以前は何日も思い悩んだ挙句、結局ダメだった事もありますし、今でも悔しい思いをする事があります。
せっかくお問い合わせを頂いたのにお役にたてない時にはヘコミます。
しかし、あるお客様からお聞きした薬剤の名前を調べて取り寄せる際に製薬会社様との繋りが出来ました。
この事で、より一層本格的な色止めへの取り組 みが出来るようになりました。
海外でも染色工場に広く信頼されている製薬会社様で弊社にもお越し頂き、これからご協力いただける事になっています。
例えば電 話一本で「素材は?」「ウールです!」「そんなら、酸性染料のはずだけど、この薬でダメだったらまた違う薬を用意します!」というように、スピーディーに 次のテストが出来るのです。
残念ながら・・・・
ここまで、ドライソーピングによるソーピング、水洗機による色止め、をご説明しました。
しかし残念ながらこの工程でも色が止まらない事があります。
それは、海外で色を作る時の色合わせの段階で、染料だけでなく顔料を使って色を作ってしまう事があります。
基本的に染料は分子の結合によって色を形成しているのに対して、顔料は色のついた粉が生地に樹脂の接着力によってくっついている状態です。
ですから、顔料による染着性は非常に不安定なものなのです。一般に顔料による染色は色が出続けると言われています。クレヨンを鍋に入れて火に掛け溶かした所に生地を入れる事を想像して下さい。
おわかりいただけたでしょうか?
水洗い加工(ワンウォッシュ)(ホルムアルデヒド除去)
バイオ加工
未加工 |
バイオ加工有 |
「バイオ加工」とは、特殊な酵素(コットンやレーヨンの主成分セルロースの分解酵素セルラーゼ酵素を利用しています)を使って微生物に布生地の表面を食べさせる加工になります。
微生物を含むバイオ溶液につける事により、布生地を柔らかくしたり、製品で洗いをかける事により衣類の凹凸が作用して独特の色落ち感(いわゆる"あたり")等の古着感覚を表現出来ます。
シリコン柔軟加工
柔軟加工の中でも、とりわけ風合いを柔らかくしたい時は、シリコン柔軟剤を使用します。
シリコンの粒子を繊維間にもぐり込ませる事で、摩擦抵抗が減少し、繊維同士のすべりが良くなるので、静電気が起こりづらくなります。
また、生地が柔らかくなり、着用時のスベリが良くなり、肌触り等の風合いを改善します。
撥水加工
生地・衣類にシリコン樹脂・フッ素樹脂などを用い,繊維の表面張力を小さくする事により、繊維の隙間から内部に水や油を染み込ませない疎水性にする事により水や油をはじく性質をもたせる加工です。
「撥水加工」と「防水加工」の違いのご質問を良く頂きますが、防水加工は樹脂で皮膜を作り雨や風を完全に遮断するので蒸れやすく、撥水加工は表面張力の特性で空気や熱を通し、水や油のみを遮断するので、防水加工にくらべて撥水加工は蒸れ難くなります。
撥水加工をすることにより、撥水効果が得られ、水が染みこみにくくなるためコートや上着などに加工すれば商品の付加価値アップにつながります。
防炎加工
防炎加工には二種類あり、防炎(不燃・難燃)糸で作る物と、生地に後から防炎加工を施すことにより、燃えやすい繊維製品を燃えにくくする方法があります。
PIJで行っている防炎加工は、後から生地(綿・レーヨン等のセルロース系繊維のみ※1)に加工するタイプになります。
消防法で定められた場所(高さ31メートル以上の高層建築物やコンベンションホール・映画館・劇場・ホテル・百貨店・レストラン等人が集まる場所)でのカーテンや絨毯には防炎品使用が必要になり、住宅用マンションでも高層階(31メートル以上)であれば同様にカーテン類の防炎品使用は必要になります。
PIJで使用している防炎剤は、防炎性能試験番号登録済製品で、 PRTR※2非該当品、また消防法・労安法・科審法などの各種法規制非該当なので安心して加工できる防炎剤になっております。
尚、PIJでは防炎シールは発給できませんが、防炎加工作業完了書は有償にて発行可能です。
※1 加工可能な素材であっても、表面に特殊コーティング加工(前面に顔料プリントがされている物や撥水加工等)されている生地ですと加工できない場合がございますので、事前に生地の素材・表面加工の有無をご確認して下さい。
※2 PRTR制度とは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が、事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量及び廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量を、事業者が自ら把握し国に届け出をし、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する制度です